2021.06.26

とことんコーヒー好き 4杯目 コーヒーが豆、と勘違いしている人が多い   

 

コーヒーが豆、と勘違いしている人が多い……

 

写真左が焙煎する前のコーヒー生豆(種子)。右はそのコーヒー豆(種子)を焙煎して仕上げたもの。通常販売されているコーヒーはすでに焙煎されているため、こちらのコーヒー豆は見たことがあっても、左の生豆を見る機会は少ないかもね。

 

コーヒーが豆だったら、煎り豆乳のような飲み物だろうか?

 

僕がコーヒー屋を始めた頃、コーヒー豆は売ってますか?とよく尋ねられた。まぁ確かに、コーヒーショップなので、コーヒー豆⁈ の販売もしていることには間違いない。売っていますかと尋ねられれば、はい、売ってます。と答えていた。そして〇〇gで〇〇円です。そういって袋に詰めて、売っていたことは事実だ。ところがしかし、よく考えてみてほしい。コーヒーは豆? ある日、コーヒー豆を買いにきたお客さんに聞いてみた。あのぉ、コーヒーを豆だと思ってるんですか? と。そのお客さんは訝しげに「はい」と答えた。ということは、コーヒー豆を栽培して、それを何かどうにかして、今目の前にある黒い粒になっていると思っているということですよね⁈ と聞くと、「そうではないんですか?」という問いが返ってきた。ということは、畑に撒いたコーヒーの種に肥料を与えて成長してくると、まるで枝豆やエンドウ豆、大豆、小豆、そら豆、落花生などなど、のようにニョキニョキと育った枝の先端についた鞘の中から、黒いコーヒー豆がぽろりと落ちてくる。あるいは、高く育ったコーヒーの木に、コーヒー豆がたわわに育ち、それをもぎとって、それがこのコーヒー豆だと思っているのでしょうか?「はい、そうではないのですか?」と逆に問いかけられてしまった。うぅ〜、なんということだ。そうか、そうか、多くの人がそういう認識でコーヒーを飲んでいるのか⁇ となると、コーヒーって一体何?豆の飲み物なの?けどみなさん、もしコーヒーが豆だと思っているのなら、豆から抽出されたエキスを飲んでいると思っているんですか?それって、豆乳のようなもの?焙煎して焦げた豆から採ったエキスをを飲んでいる、そういうことなのか。しかし、そう思って飲んでいる人はコーヒーを美味しいと思って飲んでいるのか? その真相を突き止めるには、相当な労力が必要になりそうだな。

 

大豆や小豆、落花生、そして枝豆、そら豆、グリーンピースなど、きちんとした認識がされなかったら、コーヒーもそれらと同様に、豆を栽培して作られたものが原料だというふうに、勘違いされ続けていくかもしれない。

 

とにかく僕はその時のお客様にこう説明した。その時持っていた焙煎する前の緑色のコーヒーの種子を手に載せて見せながら、「コーヒーはコーヒーの木になる赤い実の中の種子を取り出して、それを洗ったり、洗わなかったり、発酵させたり、させなかったり、まぁ色々な作業を経て、このようなエメラルドグリーンの種子にして、袋などに詰め、海外などへ輸出されます。日本に届いたそれが、これ。このエメラルドグリーンの粒がいわゆるコーヒー豆⁈ と呼ばれているものです。このように、手にした種子を焙煎することによって、今飲んでいるコーヒーになるんですよ」と。すると、えッ⁉︎ コーヒー豆って翠色なんですか⁈ 初めから黒いものと思っていました。というよりも、フルーツだったとは、全く想像もしていませんでした(^◇^;)そうかそうか、まぁ、確かに、コーヒー豆といわれているものがフルーツと思うより、豆と思う方が素直かもしれない。

 

コーヒーの果実は、コーヒーチェリーと呼ばれる赤い実。または黄色、品種によっては赤紫色になるものもある。完熟した実を摘んで、中を見てみると、上記イラストのようになる。果肉の中に種子がふたつ入っているのが通常。その種子を取り出したのが、ページのはじめに載せた緑色の豆(種子)。

 

コーヒーは豆でなくフルーツ!赤や黄色の木の実の種子がコーヒーの原料

 

それではここからは、僕がコーヒーに関する情報を集めて知り得た知識を使い、コーヒーがフルーツであるということを説明していくことにしよう。さらに、コーヒーの果肉部分、フルーツの部分を使い、とても希少な飲料にしているケースもある。それを飲むと、あぁッ本当にコーヒーってフルーツなんだね‼︎ と納得してもらえるはずなのだが、ただしこれってなかなか手に入れにくい、時折通信販売で買うこともできるので、興味がそそられたという方は、ググってみてください。今回は、たまたま手元にあったので、久しぶりに淹れて飲んでみた。まぁ、コーヒーとは違うけど、飲料としては、ありかな。ただし、これまでに飲んだことのない、それはそれは未体験の飲み物といったところだ。それではまず、コーヒーは、アカネ科コーヒーノキ属に属する植物の総称。アラビカ種、ロブスタ種の2種類が主に栽培されている。アラビカ種の原産地はエチオピア南西部の高地とされている。常緑で高さが約2メートル程度の低木、ジャスミンに似た可憐な白い花をつけ、香りはまさにジャスミンそのもの。その花の香りが後のコーヒー液にも仄かな香味として出てくるのも特徴だ。

 

左がアラビカ種のコーヒーノキ。直射が当たらないようにバナナなどの高木で形成されたシェードツリーが植樹されている。右は可憐に咲くコーヒーの花。

 

花が咲き終わると、赤や黄色の実をつける。熟した果実は食べることができ、果肉は非常に甘い。種類によっては糖度18度にもなるものもあると言われている。

 

コーヒーの果肉の部分を使って作られる珍しい飲料もある。

 

赤や黄色にたわわに実ったコーヒーの甘い果実。ただし、その果肉は非常に薄く、食用に用いられるほどの量はない。そのほとんどは、コーヒーの原料となる種子が取り除かれると廃棄されてしまう。ただ、ごく稀に、この果肉を乾燥させて、ハーブティーのようにして楽しむ「カスカラティー」という商品になることがある程度だ。と、カスカラについてはさらっと説明して終えようと思ったのだが、ウゥッ‼︎自分が知ってることは、誰かに伝えたい。いや伝えるべきことは伝えよう。スルーは良く無いよね!

というのも、「んッ⁉︎ カスカラティーってなに⁇」と気になりますよねぇ〜。多分知っている人は、それほど多く無いと思う。実はこれがまた珍しいコーヒーの副産物? で、通常廃棄されるコーヒーチェリー部分を活かして、嗜好品として楽しむものなのだ。実から種子を取り除いたら、果肉部分を乾燥させる。葡萄を乾燥させたもの? と思わせるような見た目なのだが、香りも熟して発酵させた葡萄に似ているね。ただ、どちらかというと、梅干しに近い。そのカスからは、無農薬栽培など、栽培方法にもかなり気を使う必要があることからか、滅多に手に入るものではない。のだが、今回はたまたま手元にある。数年前から保管していた、ので淹れてみることにしよう。

 

こちらがコーヒーチェリーを使ったお茶の原料、カスカラ。

 

発酵させて乾燥した葡萄のような見た目、梅やベリーの香りが強く感じられる

 

カスカラそのものを手に取り、香りを確かめてみる。梅とストロベリーが混じり合ったような強い香りがした。お湯を沸かしながら、10gのカスカラティーをコーヒーサーバーに入れて、沸騰したらお湯を200cc注ぐ。立ち上がる湯気からはほとんど何の香りも感じられない。無臭だ。先程嗅いだ時の梅やストロベリーが漂い香るということはなかった。もちろん、コーヒーの香りは全くない。そのまま10分置いて、飲んでみることにした。少量をカップに入れ、香りを嗅いでみる。まずはじめに鼻腔に届いたのは、スイートを纏ったストロベリー、プラム。ほのかにローズ、ジャスミンも香る。もう少し嗅覚を研ぎ澄ませてみると、ナッツ、トーストといった香ばしさ……、むむ、焙煎はしていなくてもトースティ⁇ と思ったが、焼いたから

 

トーストのような香ばしさが出るというのは、人の知識の思い込みなのかもしれない。元々持つ香りを焼いて助長させたから際立つのかもしれないよね。さらに昆布⁈ 旨味成分まで含んでいるのか(・・?)万物は知らないことが多い。
一口、口に含むと酸っぱい。けどとんがってない。まろやかな酢というところか。ローズヒップティーにすごく近い味で、うっすらグレープも感じられた。複数の風味を持つ、これまでに飲んだことがない、まさに、新次元のフルーツティーといっても過言ではないだろう。そのまましばらく置いて、冷めたらどんな味になるか試してみたが、梅とグレープとベリーがミックスされた風味で、ほんのり酸味の効いたフルーツジュースだ。ということで、コーヒーは枝豆や大豆、落花生のように豆を栽培してできたものではなく、コーヒーチェリーと呼ばれる甘い果実を育成して、それから取り出した種子からできているものだということ、わかっていただけたでしょうか?

僕のコーヒーはやっぱり美味い。それは使っているコーヒーの原料にこだわっているから、そう書いた通りに、このようにフルーツジュースとして十分成立する美味しいコーヒーチェリーから取り出した種子を使っているためだ。ただし、これだけは断言できる。例え他のお店や他人が僕と同じ原料を使っているからといって、そのコーヒーが僕のコーヒーと同じ風味を出していることは無い。それは、手にした種子をどのように料理するかでまた劇的に変わってしまうためだ。それってなに⁇ そこはまた別の機会に書くことにする。とにかく、一度調布ショウルームで飲んでみることをおすすめする。そうすれば違いに気づけるはずだ。これからコーヒーを飲むときには、フルーツ由来の飲料だということを気にしていただくと嬉しい。そうすることで、これまでに感じられなかった、あるいは見過ごしていた美味しさや、コーヒーを選ぶときの楽しさが広がるはずだから。

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Writerこの記事をかいた人

金子 智

金子 智

自動車、ゴルフ、建築などをテーマにした雑誌、書籍の編集者として活動するなかで、スペシャルティコーヒーショップ「Blue leaf coffee」をオープン。以来、 コーヒー本来の風味を知っていただくために、各地へ出向き、楽しいイベントの開催なども行なっています。

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