2021.07.17
とことんコーヒー好き 5杯目 コーヒー好きが求めるのって、味? 香り?
コーヒー好きが求めるのって、味? 香り?
コーヒーを挽いてる時に漂ってくるあま~い香りの元ってなんだろう?
コーヒーが醸し出すあまぁ〜い香りは、ミルでコーヒーを挽いている時に最も強く感じられる。コーヒーを挽くのに欠かすことが出来ないミルだけど、どんなミルで挽くかにもその香り立ちが変わるような気がする。お店では電動タイプのものを使っているが、手動式のミルは挽いていると、手に伝わる感触と音と香りが楽しめるところが好きだ。挽いている時、特に焙煎仕立てのコーヒーが醸す香りは癒しのアロマに満ち溢れている。
僕がお店でコーヒーを淹れているときに、お客さんにこんな風に言われることがある。「コーヒーって豆を挽いているときの香りが好き!」実はそう言われるケースって結構多い。うん、それには僕も同感だ。特に焙煎したてのコーヒー豆を挽いている時、もぉ〜たまらなくいい香りが、僕の鼻腔を撫で通る。焙じたばかりのカリッと焼けた、軽やかな香ばしさ。そして、ほのかに甘い香りがふわっと立ち上がってきて、ウワッこれは美味しそう。このコーヒー飲んだらきっとこんな味がするな。なんて想像したり、いいコーヒー豆を手に入れた、よし、やったぞ! とか、もぅ早く飲みたいー‼︎ とか思いながらそのわずかな瞬間を楽しんでいる。
今では僕のコーヒーから立ち上るその独特の香りの要素がなんなのかがわかっているけど、コーヒー屋を始めた頃は、正直言ってわからなかった。だって、コーヒーから甘い香りがするなんていうこと、それまで体験したことがなかったし、想像もしてなかったからね。けど、初めてそれを知ることになったきっかけは、おおよそ10年前に、「ゲイシャ」という名の特別なコーヒーと出会ったことだ。当時コーヒーを焙煎してもらっていた工房の社長が教えてくれたのだが、そのコーヒーからは何か特別な香りがするとか、これまでのコーヒーにはない味なのだとか、コーヒーなんだけど、紅茶のようで美味しいんだってそのコーヒー、と噂話のように教えてくれた。むむ……⁇、紅茶のようで美味しい? って、紅茶が好きなら、コーヒー飲まずに紅茶を飲んだらいいんじゃないの⁇ と思ったりもしたものだ。まぁそんな噂を聞いて以来、これまでに聞いたことも、飲んだことも見たこともないゲイシャというコーヒーに興味が惹かれていった事は確かに覚えている。以来、僕はその謎めいたコーヒーの情報を集めた。やがてそれは、パナマで生産され、フルーツの風味が感じられる「ゲイシャ」という品種のコーヒーであることが判明したのだった。ただし、もの凄く高価で、しかも流通量は少なく手に入りづらいモノだという事も突き止めた。その時は、謎めいたコーヒーの正体に近づけたことはちょっと嬉しかった。そしてついに、コーヒーからあまい香りが出る、その正体も突き止めることが出来たのだ
パナマエスメラルダ農園産、ゲイシャレオンナチュラル。焙煎後に見ると、それまでに見たことのあるコーヒーとは姿形、大きさも違っていた。粒がやや大きく、細長い。そして中央の窪みが深く、はっきりしているのが特徴的だった。これが10年前に僕を魅了したコーヒー。
スペシャルティコーヒーとの出会い、それがコーヒー屋にのめり込んだきっかけ。
- ある日、何かのきっかけで、それはスペシャルティコーヒーという特別グレードのコーヒー原料であると知った。1杯目でも書いた通り、僕のコーヒーは今、そのスペシャルティグレード以上のコーヒー原料のみを使っている。ゲイシャという品種のコーヒーは、そのスペシャルティコーヒーの中でも最も美味しいと評価されたモノらしく、世界一高価で取引されていることでニュースになったことも知った。それにしてもコーヒーの原産国といえば、ブラジル、エチオピア、キリマンジャロ、ブルーマウンテン、マンデリントバコとか、なんとなくこんな呼び名⁇ で売られているから、それが原産国なのかなぁ〜という認識だった。ところが違った。パナマ、パナマのコーヒーですか⁈ 知らなかったのだ。衝撃的だった。さらに中米、南米などこれまで知らなかった国で生産されているコーヒー達。しかも素晴らしい風味を持って世界のコーヒーファンを魅了しているというではないか。その国々で生産されるコーヒーの風味特性の違いについては、改めて紹介するけど、とにかくこれこそが、甘く、フルーティな香りを醸し出すコーヒー。でも、なぜ⁇ これまでのコーヒーとは全く違う、実に美味しいコーヒーはどのようにして生まれてきたのか。好奇心と探究心がくすぐられた。これがきっかけで、今の僕のコーヒーがある。
- とにかくその後は、スペシャルティコーヒーというものを手にすることを考えた。ネットで検索して、購入できることも知った。やがて手にいれたスペシャルティコーヒーがどの国のどの農園のものだったかはもう忘却の彼方だが、今では当たり前に飲んでいるけど、あの時はこれまでのコーヒーとは全く別モノ。こんなコーヒーがあったなんて、今まで飲んでいたコーヒーは何だったのか⁇ 驚嘆した。それほど衝撃的で、美味しかったことは覚えている。だって、いまだにそれでコーヒー屋やってるんだからね。
現在、僕のお店で提供しているコーヒーは、基本ハンドドリップのみ。注文を受けてからミルで挽き、ペーパーフィルターを使って淹れる。この方法で抽出するコーヒーは、香りも良く、コーヒーの液体が澄んでいて綺麗。そして飲むと口当たりも滑らかで、やわらかなコーヒーに仕上がる。さらに飲んだ後の口残りに嫌な酸味や、苦味、雑みも無く、心地よいアフターテイストが長く持続するのが特徴だ。
トロピカルフルーツを絞ったようなフルーティーな味がコーヒーファンを魅了する。
- というわけで、そのスペシャルティコーヒーから立ち上がる香りは、これまでのコーヒーとは雲泥の差があった。前回のブログにも書いた通り、コーヒーはフルーツだ。驚くことに糖度18度にもなる品種もあるというではないか。それってメロン並みに甘いっていうことでしょ。その甘さが種子に残っているからこそ、あまぁ〜い香りがコーヒーからも漂ってくるというわけなんだね。挽いているときの香りはもちろんだけど、それにお湯を注いでいる時の香りは、挽いている時とは変わり、例えばジャスミン、ストロベリー、ブルーベリー、時にはアップル、パッションフルーツなんかの香りを感じることもある。また時には、チョコレート、ナッツ、トーストなど、香ばしさを纏った甘さといえばいいだろうか。それはコーヒーの種類によって変わるんだけど、そんな独特の香りを感じることを今の僕は楽しんでいる。
ライチ、マンゴー、パッションフルーツ、パイナップルなどのトロピカルフルーツっぽい風味を出しやすいのがケニアやタンザニアなどのコーヒー。スロベリー、ラズベリー、ブルーベリーなどベリー系の風味に茉莉花の香りが感じやすいのがエチオピアやイエメン。最近はハニー系の甘さを追求している産地、農園も増えている。んッ⁉︎ ハニー? 気になるでしょ⁉︎ それもまた今度。
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