2021.04.02

真夜中のいちりん 花束みたいな恋をした

花との出会いは、一期一会。

仕入れの際に産地や等級などを指定したとしても、そこは生命のあるもの。

いちりん毎に表情は異なるし、季節によって色味も変わっていきます。

 ちょっと不揃いな花達との出会いにはフローリストとしての腕が鳴るし、キラキラ輝くそれらとの出会いには,初恋の様なときめきさえも感じたりします。仕事で使う予定がなくても、連れて帰りたくなっちゃうんです。

まだ夜が明けていない市場で、そんな花たちとの出会いを求めて歩き回る時間が僕は好きです。

花たちとの出会いに、そして花の生命を頂いたことに感謝をして、これからも花を活けていきます。

こちらでは、フローリスト飯野学が花との出会いに感じたことなどを紹介していきます。

「花束みたいな恋をした」を観て感じたこと

「何で花束なんだろう?」

とある打ち合わせの席で、ディレクターが放った一言をきっかけに
「花束みたいな恋をした」を観てきました。

フローリストという職業上、観る前から何となくその「花束」の意味は解ったような気がしていました。
花業界では、花をざっくりと「切り花」と例えば洋ランなど根のついた「鉢物」に大別されているんですね。
僕の認識では、「鉢物」は生命をつなぐもの。
お花を楽しんだ後も品種によって手法は異なりますが、例えば種を取り出して新たに育てたり、洋ランでは花が咲き終わったステムを根元近くからカットして、水や肥料を与えたりとそれなりのお手入れをすることで次のシーズンにまた新たなお花を楽しむことができますよね。
一方切り花は、いつか消えていくもの。
だからこそ、尊い。

花束みたいな恋をした

調布駅から30分、こんな普通の風景の中、物語は進んでいく

 

映画の内容は、ドラマチックな展開もなく只々普通の日々が淡々と展開されていくのですが、その誰にでも思い当たる様な日常が却ってリアルに感じたし、今まで自分が歩んできた日々と向き合うきっかけになりました。
慌ただしい毎日を言い訳にして、忘れてさえいた過去のかさぶたみたいなものを剝がされた様な感じがして、ヒリヒリと心が痛みます。

そして、やはりこれは「花束」でしたし、僕が思っていたよりもずっと深い「花束」でした。

だいぶ昔のこと

だいぶ昔のこと。
出会って間もない頃に、誕生日プレゼントに何が欲しいかを聞いたら、「花束」でした。
「今はまだ、つぼみだったり、淡いピンクなんだろうけど、これから2人の時間が経過するごとに花が開いたり色味が熟成したりと花束の表情も変わっていくんだろうなぁ。」
と彼女がつぶやいていたことを思い出しました。

そんな過去も踏まえて、最後はまさに「花束」を感じるシーンでした。

まだつぼみのフレッシュな花束と、満開を通り過ぎて、結束したステムさえも傷ついてしまった花束との対比が何とも言えないシーンでした。

花束みたいな恋をした映画にインスパイアされて束ねてみました。

 

さて、そんな想いから花を束ねてみました。
手にしたのは、そう「マから始まるあの花」です。
久しぶりに束ねたこの花は、テクニックや要素を省いてシンプルに向き合うと良い会話ができるような気がしました。
撮影は自然光ではなく、映画へのオマージュから街灯の下に咲くようなライティングにしました。
この抜ける様な青空じゃない青が、僕が感じたすべてです。

 

別冊調布マガジンは日常にある新たな発見を発信してまいります

引き続き 「BMW×調布Life」よろしくお願いします。

別冊調布マガジン

BMW×調布Life

 

Writerこの記事をかいた人

飯野 学

飯野 学

フラワーデザイナー クリエイティブフラワーIINOオフィス代表
「人をもてなす何かをしたい」との想いから、フローリストの世界に入る。小売・市場仲卸で経験を積み、ファッションモデル榊ゆりこ氏主宰のフラワーショップ「bRess」で店長を務める。現在はフラワーデザイナーとして「花を媒体に新しいライフスタイルを提案する」をテーマに、ホテルのエントランスやテレビ番組の装花・雑誌へのブーケ掲載や今田美奈子食卓芸術サロンの講師など多方面で活躍中。目黒区のアトリエでは、フラワースクールも開催している。

一覧へ戻る