2026.10.15
BMWずかん 4シリーズ クーペ M440i xDrive 看板の直列6気筒「B58」を読み解く

BMWずかん、今回は4シリーズ クーペの「M440i xDrive」です。
前回のM2はM専用のエンジンでした。今回の主役は、BMWの看板ともいえる3.0L直列6気筒「B58」。さらに、それを受け止める8速ATまで、少しマニアックに掘り下げます。
M440i xDrive の基本スペック
| M440i xDrive クーペ | 420i M Sport クーペ | |
|---|---|---|
| エンジン | 直列6気筒 M ツインパワー・ターボ | 直列4気筒 ツインパワー・ターボ |
| 排気量 | 2,997cc | 1,998cc |
| 最高出力 | 285kW〔387PS〕/5,800rpm | 135kW〔183PS〕 |
| 最大トルク | 500Nm/1,800–5,000rpm | 300Nm |
| ミッション | 8速AT(ステップトロニック) | |
| 駆動方式 | 四輪駆動(xDrive) | 後輪駆動 |
| 全長×全幅×全高 | 4,775×1,850×1,395mm | — |
| ホイールベース | 2,850mm | — |

エンジン:BMWの看板、直列6気筒「B58」
BMWといえば直列6気筒。6つのシリンダーを一列に並べたこの形は、エンジンが回るときに出る揺れ(振動)を、6つのピストンの動きで互いに打ち消し合えるのが特長です。だから回転がなめらかで、音も澄んでいる。「シルキー・シックス」と呼ばれてきた理由です。
M440iに載るのは、2015年に登場した「B58」という型の6気筒。実はこのエンジン、振動を打ち消すための専用の軸(バランサー)を持っていません。直列6気筒そのものが、素性としてバランスがいいからです。
1気筒=約500cc。4気筒と「部品」を分け合う
B58は、BMWが2015年前後に一新したエンジン群の一員です。考え方はシンプルで、1気筒あたり約500ccの「単位」を決め、それを4つ並べれば2.0Lの4気筒、6つ並べれば3.0Lの6気筒にする。ピストンやコンロッド(ピストンとクランクをつなぐ棒)は、4気筒と6気筒で共通です。

同じ4シリーズの420iとM440iは、言ってみれば「同じ部品で、気筒の数が違う兄弟」。部品を共通にすることで、作り込みにかけるお金と手間を、それぞれの仕上げに回せます。
中身を分解してみる
- アルミ製のブロック… シリンダーの上面までしっかりふさいだ「クローズド・デッキ」。外側には細かいリブ(補強の筋)をびっしり入れ、高い燃焼圧力に耐える
- シリンダーの内壁は「溶射」… 鉄の筒(ライナー)をはめ込む代わりに、溶かした金属を吹き付けて薄い壁を作る。軽く、熱も逃がしやすい
- クランクシャフトは鋼の鍛造… 7か所の軸受けで支え、12個のおもり(カウンターウェイト)で回転のバランスを取る
- カムを回すチェーンは、エンジンの後ろ側… ミッション側に置くと、ミッションの重さ(慣性)がクランクのねじれを抑えてくれ、チェーンへの負担が減る
- ターボは1基、ただし排気の通り道は2つ… 「ツインスクロール」と呼ぶ形で、6気筒を3気筒ずつに分けて排気をタービンに当てる。排気の脈動どうしが邪魔し合わず、低い回転からターボが効く
- インタークーラーは吸気の通り道の中… 冷却水で冷やす方式(水冷)を、吸気マニホールドに組み込んでいる。空気の通り道が短く、アクセルを踏んでからの反応が早い
- スロットルに頼らない吸気… 吸気バルブの開く量そのものを連続的に変える「バルブトロニック」と、吸排気のタイミングを変える「ダブルVANOS」。空気の量をバルブで決めるので、吸い込むときのロスが少ない
日本のM440iは「2代目B58」の上位版
B58はこれまでに大きく3回、世代が変わっています。

日本仕様のM440i xDriveは387PS(285kW)/500Nm。BMWの技術資料にある2018年からの2代目「B58TU」の上位の出力レベル(285kW/500Nm)と数字が一致します。2代目で変わったのは、例えばこんなところです。
- 燃料を噴く圧力を350barまで上げ、より細かい霧にして燃やす
- カムを回すチェーンを2本つなぎから1本に。部品が減り、静かで軽くなった
- エンジンが温まるまでは、冷却水をシリンダーヘッドに多く、ブロックには少なく回す「スプリット・クーリング」。早く温まり、燃費と排ガスに効く
- こうした改良で、CO2を約2.5%減らしながら、出力は10kW・トルクは50Nm上がった
マニアックな話をひとつ。2代目B58の中位の出力レベルは、排気マニホールドをシリンダーヘッドの中に作り込んで、軽く・早く温まるようにしています。ところが上位の出力レベルは、熱と負荷が大きいため、あえて排気マニホールドを別体のままにしています。同じ「B58」でも、出力によって中身を作り分けているわけです。圧縮比も、上位は10.2、中位は11.0と違います。
ちなみに2022年からの最新の3代目「B58TU2」は、ミラー・サイクル、電動でカムの位置を動かす「eVANOS」、減速時に排気バルブを止めてエンジンの抵抗を約3分の2減らす仕組みなど、さらに一歩進んでいます。ただし3代目は48Vのハイブリッドと組み合わせることが前提で、日本仕様のM440iには載っていません。

ミッション:ZFの8速AT、その第3世代
組み合わせるのは、ドイツのZF製8速AT「8HP」。前回のM2と同じ一族です。遊星ギア4組と、つなぐ・止めるための5つの要素(クラッチ3つ、ブレーキ2つ)で8段を作り、どのギアでも3つをつないで2つを離しておく。この基本は同じです。

(この表の読み方は、BMWずかん M2 の回で詳しく書いています)
第3世代で変わったこと
- 頭脳と油圧の作り直し… 変速を制御するコンピューターを新しくし、油圧を細かく制御する部品も改良。変速のつながりがなめらかに、そして速くなった
- 振動を吸収するダンパーの改良… エンジンから伝わるねじれの振動をより上手に吸収し、乗り心地と変速の心地よさを高めた
- ギア比の幅が広がった… 同じ第3世代の大トルク用では、1速5.50・幅8.59倍(前の世代は1速5.00・幅7.81倍)。発進は力強く、巡航は低い回転で
M2の8速ATとの違い
同じ8HPでも、M2とM440iでは味付けがかなり違います。
| M440i xDrive | M2 | |
|---|---|---|
| ベース | 8HPの第3世代 | 8HPをもとにしたM専用(M8HP76) |
| ギア比の考え方 | 幅を広げて、発進と巡航を両立 | 幅を広げず、ギアの間隔を詰める |
| 惰性走行(コースティング) | 使う場面を、普通のBMWより絞っている | 載せていない |
| 変速の性格 | 走行モードの切り替えに合わせて変わる | ドライブロジックで3段階 |
- 惰性走行… アクセルを離したとき、エンジンをミッションから切り離して転がるように走り、燃料を節約する機能。普通のBMWは快適寄りのモードでも使いますが、M440iのような「Mパフォーマンス」のモデルは、そこでは使わないように絞っています。アクセルを離したときのエンジンブレーキと、ダイレクトな感覚が残ります
- スポーツ寄りのモードでの変速… ブレーキを踏んだときのシフトダウンをより鋭く、エンジンの回転を最高出力側へ引き上げる
- 回転の上限まで引っ張れる… マニュアルモードで、横滑り防止装置を「DTC」(少し滑りを許すモード)にすると、勝手にシフトアップせず回転の上限まで使える
- 先読みの変速「コネクテッド・シフト」… ナビの地図や前方のレーダーで、カーブや前の車への接近を先読みして、早めにシフトダウンする
追い越しの「スプリント」機能
オプションのMパフォーマンス・パッケージには、「スプリント」機能が付きます。左のパドルを、メーターに「SPRINT」と出るまで引き続けると、ミッションは使える一番低いギアに落ち、走りのセッティングも一気にスポーツ寄りに切り替わります。追い越しが終わって穏やかに走れば、自動で元に戻ります。


まとめ
- BMWの看板、直列6気筒「B58」。バランサーを持たないほど素性のいい6気筒
- 1気筒=約500ccの部品を、420iの4気筒と分け合う設計
- 日本のM440iは2代目B58の上位版。387PS/500Nm、排気マニホールドもあえて別体
- 8速ATは第3世代。M2のM専用とは違い、発進・巡航・燃費まで幅広くこなす味付け
M2が「サーキットの匂いがする6気筒」なら、M440iは「毎日使える、いちばん贅沢な6気筒」。どちらも、BMWが6気筒を作り続けてきた理由がよく分かる一台です。
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※写真はBMW公式の車両画像(CG)です。実車とは色味などが異なる場合があります。
※諸元は日本仕様の公表値です。エンジンとミッションの技術的な内容は、BMWの技術資料をもとに当社がまとめたもので、欧州仕様の資料の値を含みます。価格・仕様は予告なく変更される場合があります。最新の情報はBMW Chofuまでお問い合わせください。
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