2026.11.04
BMWずかん M3/M4 コンペティション M xDrive Mの直列6気筒「S58」と、530PSを四輪に配る「M xDrive」

BMWずかん、今回は「M3/M4 コンペティション M xDrive」です。
前回のM440i の回では、BMWの看板の直列6気筒「B58」を取り上げました。今回の「S58」は、そのB58を土台にBMW M社が作り直したエンジンです。530PSを4つのタイヤに配る四輪駆動「M xDrive」とあわせて、マニアックに掘り下げます。
日本のM3/M4は「コンペティション M xDrive」だけ
海外には、6速マニュアルの後輪駆動や、出力を抑えた標準モデルもあります。日本で選べるのは、いちばん上の「コンペティション」に四輪駆動を組み合わせた仕様だけです。後輪駆動・マニュアルで乗りたい方には、M2があります。
- M3 コンペティション M xDrive… セダンとツーリング(ワゴン)
- M4 コンペティション M xDrive… クーペとカブリオレ
エンジン・ミッション・四輪駆動は4車種とも共通です。この記事ではM4 クーペを例に説明します。
| M4 コンペティション M xDrive クーペ | M440i xDrive クーペ | |
|---|---|---|
| エンジン | 直列6気筒 M ツインパワー・ターボ(S58) | 直列6気筒 M ツインパワー・ターボ(B58) |
| 排気量 | 2,992cc | 2,997cc |
| 最高出力 | 390kW〔530PS〕/6,250rpm | 285kW〔387PS〕/5,800rpm |
| 最大トルク | 650Nm/2,750–5,730rpm | 500Nm/1,800–5,000rpm |
| ミッション | M専用 8速AT(M ステップトロニック) | 8速AT(ステップトロニック) |
| 駆動方式 | 四輪駆動(M xDrive) | 四輪駆動(xDrive) |
| 全長×全幅×全高 | 4,805×1,885×1,400mm | 4,775×1,850×1,395mm |
| ホイールベース | 2,855mm | 2,850mm |
| 車両重量 | 1,790kg | — |

エンジン:B58を土台に、Mが作り直した「S58」
S58は、M440iのB58(2代目)をベースにしたエンジンです。ただし、B58とまったく同じ部品は約1割しかありません。残りの約9割は、新しく設計した部品か、ほかのエンジンと共用する部品です。見た目は同じ直列6気筒でも、中身はほぼ別物です。


ターボは2基。3気筒ずつ受け持つ
M440iのB58はターボが1基です。排気の通り道を2つに分けた「ツインスクロール」で、6気筒の排気を1基で受けます。S58はターボを2基にして、前の3気筒と後ろの3気筒で1基ずつ受け持たせています。1基あたりの仕事が減るので、アクセルを踏み込んだときに素早く過給できます。
圧縮比はB58の10.2に対して、S58は9.3です。圧縮比を下げると、ターボで空気を強く押し込んでも異常燃焼(ノッキング)が起きにくくなります。530PSを出すための設定です。
高回転に耐える回転部分
- クランクシャフト… 鋼の鍛造で、重さは約21.2kg。軽く作ったクランクで、回転が上がるときの反応を鋭くしている。M3/M4用は、同じS58を積むX3 M/X4 M(先代)用より約1.9kg軽い
- ピストン… アルミ合金を鍛造で成形したもの。鋳造より強く、高い燃焼圧力に耐える
- コンロッド… ピストンとクランクをつなぐ棒。M5などに積むV型8気筒「S63」と同じ鍛造品を使っている
- シリンダーの内壁… 鉄の筒をはめ込まず、溶かした金属を吹き付けて薄い壁を作る「溶射」。ここはB58と同じ考え方
シリンダーヘッドの「型」を3Dプリンターで作る
シリンダーヘッドは金属を型に流し込んで作ります。その型の中に置いて、冷却水の通り道などの空洞を作る部品を「中子(なかご)」と呼びます。S58は、この中子を3Dプリンターで作っています。普通の鋳造では作れない複雑な形の通り道を作れるので、重さを抑えながら、熱くなりやすい部分をしっかり冷やせます。
サーキットでも油切れしないオイルの仕組み
サーキットで強くブレーキを踏んだり、高速のコーナーを曲がり続けたりすると、エンジンの中のオイルは前後左右に偏ります。オイルポンプが空気を吸うと、エンジンは一瞬で傷みます。
S58は、オイルを吸い戻す専用のポンプを追加しています。前側に寄ったオイルや、ターボの軸受けにたまったオイルを吸い戻し、オイルパンの後ろ側へ送ります。これで前後方向も左右方向も、1.3Gまでオイルを切らさない設計です。
暑いサーキットでは、まずエアコンを弱める
真夏のサーキットで冷却が限界に近づくと、S58を積むM3/M4は、まずエアコンの冷房を弱めます。空いた冷却の余力を、エンジンとターボで圧縮した空気を冷やす方に回すためです。
2024年からの改良型でM3/M4は510PSから530PSになりましたが、エンジンの部品は変えていません。エンジンを制御するコンピューターの設定を見直して、20PS上げています。
ちなみに欧州向けのS58は、2026年7月から排ガス規制「ユーロ7」に合わせた新しい燃焼方式に切り替わります。この新しい燃焼方式は欧州向けだけで、日本向けのS58は従来のままです。

ミッション:M2と同じ、M専用の8速AT
組み合わせるのは、ZF製の8速ATをBMW M社が作り込んだ「M8HP76」です。M2の回で紹介したものと同じ一族で、650Nmのトルクを受け止めます。
- ロックアップの範囲が広い… エンジンとミッションを流体でつなぐ「トルクコンバーター」に、ねじれの振動を吸収するダンパーを追加。ほとんどの場面で、エンジンとミッションを直結(ロックアップ)したまま走れる。アクセルを踏んだときの反応がダイレクト
- 惰性走行(コースティング)はしない… アクセルを離すとエンジンブレーキがしっかり効く
- ミッションのオイルを冷やす仕組みを強化… オイルパンを樹脂からヒレの大きいアルミに変え、専用のオイルクーラーも追加
- 変速の性格を3段階で切り替えられる… シフトレバー脇のスイッチ「ドライブロジック」で選ぶ
M xDrive:530PSを四輪に配る仕組み
ここからが今回のもうひとつの主役です。M xDriveは「普段から四輪で走る」四輪駆動ではありません。基本は後輪駆動で、必要な分だけ前輪にも力を送る仕組みです。

前輪に送る量は、クラッチの締め具合で決まる
ミッションの後ろには「トランスファー」と呼ぶ箱があり、その中に何枚もの板を重ねたクラッチ(多板クラッチ)が入っています。
- クラッチを開けば、力は100%後輪へ
- 電気モーターでクラッチを締めるほど、前輪に送る力が増える
- どれだけ締めるかは、横滑り防止装置(DSC)が車の速度・横方向のG・ハンドルの角度・タイヤの回転差などから計算し、一瞬で指示する
車が外にふくらみそう(アンダーステア)、お尻が出そう(オーバーステア)といった兆しを、起きかけた段階で読み取り、前後の配分を変えて抑えます。
M3/M4のためのマニアックな改良
- クラッチを冷やす油の出口を2倍以上に… トランスファーの多板クラッチに油を配る部品を作り直し、油の出口を9か所から21か所に増やした。冷えた油がクラッチ全体に行き渡り、サーキットのような高い負荷でも性能を保つ
- 滑りの制御をトランスファー自身に… タイヤの空転を抑える計算の一部を、トランスファーの制御ユニットに移した。指示が届くまでの時間が短くなり、前後のタイヤの回転差が大きく開く前に抑え込める
- 後ろのデフは「アクティブ M ディファレンシャル」… 左右の後輪の回転差を、電気モーターで締め具合を変えるクラッチで制御する。コーナーの出口でアクセルを踏んだときも、内側のタイヤが空転しにくい


3つの駆動モード
- 4WD… 標準のモード。いちばん効率よく路面に力を伝える
- 4WD スポーツ… 後輪に送る割合を増やし、アクセルで車の向きを変えやすくする
- 2WD… 横滑り防止装置をオフにしたときだけ選べる、完全な後輪駆動
発進加速を最大にするローンチ・コントロールを使うときは、「4WD スポーツ」ではなく「4WD」を選びます。前輪にもしっかり力を配った方が、スタートは速いからです。
左右で太さの違うドライブシャフト
最後にもうひとつ。M3/M4の後輪を回すドライブシャフトは、左が短く太く、右が長く細い作りです。左のシャフトは右より25%硬くしてあります。
ハイパワーの車が冷えたタイヤで強く発進すると、左右の後輪が同時に路面から浮きかけて、車の後ろがガタガタと揺れることがあります(「トランプ」と呼ぶ現象)。左右のシャフトの硬さを変えると、揺れ始めるタイミングが左右でずれて、揺れが大きくなる前に打ち消し合います。

オプション「M ドライブ・プロフェッショナル」の10段階トラクション・コントロール
オプションのM ドライブ・プロフェッショナルを選ぶと、「M トラクション・コントロール」が付きます。後輪をどれだけ空転させてよいかを、10段階で決められる機能です。横滑り防止装置をオフにし、2WDを選んだときに使えます。
- レベル9〜10… 空転をほとんど許さない。濡れた路面向け
- レベル7〜8… 乾きかけの路面向け
- レベル1〜6… 乾いた路面で、後輪を滑らせる走りを少しずつ練習できる
アクセルで空転を細かく調節しなくても、車が決めた範囲で後輪を滑らせてくれます。そのぶんドライバーはハンドル操作に集中できます。もちろん、サーキットなど閉ざされた場所で楽しむための機能です。
2024年からの改良型で変わった見た目
- ヘッドライトは、ふちを黒くした新しいアダプティブLEDヘッドライト
- M4のテールライトは、限定車M4 CSLで採用したレーザー・テールライト
- ステアリングは下側が平らなD型。12時の位置に赤い目印が付く




まとめ
- S58はB58を土台にMが作り直した6気筒。B58と同じ部品は約1割
- ターボ2基で3気筒ずつ受け持ち、圧縮比は9.3。鍛造の回転部分と、1.3Gまで油切れしないオイルの仕組み
- M xDriveは基本が後輪駆動。多板クラッチの締め具合で、必要な分だけ前輪へ
- 4WD・4WD スポーツ・2WDの3つのモード。左右で硬さの違うドライブシャフトまで、530PSを路面に伝えるための作り込み
M440iが「毎日使える、いちばん贅沢な6気筒」なら、M3/M4は「同じ6気筒をサーキットの基準で作り直した一台」です。雨の日も冬の朝も530PSを使い切れる、それがM xDriveです。
この記事の写真のM4 コンペティション M xDrive クーペをはじめ、M3/M4はBMW Chofu の即納サイトに多数掲載中です。
▶ M4 コンペティション M xDrive の在庫情報を見る(BMW Chofu 即納サイト)
▶ M3 コンペティション M xDrive の在庫情報を見る(BMW Chofu 即納サイト)
S58の加速を試してみたい方は、BMW Chofu のスタッフまでお気軽にお問い合わせください。
※外観・内装の写真はBMW公式の車両画像(CG)、エンジンルームなどの写真はBMW Chofu の実車で撮影したものです。実車とは色味などが異なる場合があります。
※諸元は日本仕様の公表値です。エンジン・ミッション・四輪駆動の技術的な内容は、BMWの技術資料をもとに当社がまとめたもので、欧州仕様の資料の値を含みます。価格・仕様は予告なく変更される場合があります。最新の情報はBMW Chofuまでお問い合わせください。
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